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Channel: 灰皿猫の日々是放言暴言ブログ~難癖・厭味が怖くてブログが書けるか!!~
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11月11日の「日本の昔話」

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広島ブログ


                    ふしぎな宝ゲタ

 むかしむかし、あるところに、さすけという男の子がお母さんと二人で暮らしていました。

 ある日、お母さんが重い病気になりましたが、医者にかかりたくてもお金がありません。
(このままでは、お母さんが死んでしまう。お金持ちのごんぞうおじさんに、お金を借りよう)
と、さすけは出かけて行きました。
 しかし、ごんぞうおじさんは、
「なに? 金を貸せというのか? それなら、おらの家の広い畑をたがやすんだ!」
と、怒鳴りました。
 さすけは早くお母さんを助けようとがんばり、一日で畑をたがやしました。
 でも、ごんぞうおじさんは、
「はん。まだ金は貸せん。大おけに、水をいっぱい入れろ!」
と、また怒鳴りました。

 次の日、さすけは水を運びました。
 ところがおけには小さな穴が開けてあって、いくら運んでも水はいっぱいになりません。
「この、なまけ者! 金は貸せん、帰れっ!」
 ごんぞうおじさんは、さすけを追い返しました。
 追い出されたさすけは、トボトボ歩いてとあるお宮の前に来ました。
「お腹がへったなあ。もう歩けない。どうしたらいいんだろう?」
 さすけはその場に座り込むと、ウトウトといねむりをしてしまいました。
♪カラーン カラーン カラーン カラーン 
 夢の中でしょうか。
 ゲタの音が、近づいてきます。
 そして現れたのは、やさしい顔のおじいさんでした。
「母親思いのさすけよ。
 お前に、一本のはのゲタをさずけよう。
 このゲタをはいて転ぶと、そのたびに小判が出る。
 だが転ぶたびに、背が低くなる。
 やたらと、転ぶではないぞ」
「は、はっ、はい。ありがとうございます」
 おじいさんの姿は、パッと消えてしまいました。
「ありゃ? 夢か? でも、本当にゲタがあるぞ」
 さすけはおっかなびっくりゲタをはいてみましたが、なにしろ一本はのゲタです。
 立つか立たないうちに、スッテン!
「あっ、いてててえ」
と、言ったとたん、
♪チャリーン。
「ああ、小判だ!」
 さすけは、大喜びです。
 その小判を持って、すぐに医者のところへ行きました。
 医者に診てもらったお母さんは、みるみる元気になりました。
 それであのゲタは大事にしまって、さすけはお母さんと一緒に毎日よく働きました。
 そこへごんぞうおじさんが、さすけの様子を見にやって来ました。
 そっとのぞくと、二人はごちそうを食ベています。
「やいやい。このごちそうはどうした! ごちそうを買う金があるくせに、おらのところに金を借りに来たのか!」
「まあまあ、気をしずめてください。これには、深いわけが」
 さすけは、あのゲタの話をしました。
「なに、小判の出るゲタだと。
 こいつはいい。
 これは貧乏人のお前たちより、金持ちのおらが持つべきだ。
 もらっていくぞ」
 ごんぞうおじさんは、ゲタを持って帰りました。

 家に帰ったごんぞうおじさんは、さっそく大きなふろしきを広げました。
 そしてゲタをはいて、ふろしきの上に乗ると、
「へっヘっへ、まずは、ひと転び」
と、言って、スッテンと転びました。
 すると小判が
♪チャリーン。
「おおっ! 本物の小判じゃ!」
 さあ、それからというもの、
♪転んで転んで、小判がほしい。
♪チャリンコ、チャリンコ、小判がほしい。
 ごんぞうおじさんは、夢中になって転びました。
「おおっ! 小判がだんだんでっかくなるぞ! おらよりでっかくなっていくぞ! おら、日本一の大金持ちじゃあー!」
 ごんぞうおじさんは、転ぶたびに自分が小さくなっていく事にぜんぜん気づいていません。

 その頃、さすけはゲタをはいて転ぶと背が低くなる事を言い忘れたのを思い出して、あわててごんぞうおじさんに会いに行きました。
  家に行ってみますと、閉めきった家の中でチャリーン、チャリーンと音がします。
「おじさーん、おじさーん!」
と、呼んでみましたが、返事がありません。
 さすけは、とびらを力まかせに開けました。
 すると中から、小判がジャラジャラと流れ出てきます。
「うああっ! ごんぞうおじさん。どこだあー!」
 小判を押しのけて家の中へ入ると、ごんぞうおじさんは山のようにつまれた小判のすみで、バッタのように小さくなっていました。
 それでも転んでは起き、転んでは起きして、小判をどんどん出しています。
 そのうちにとうとう小さな虫になって、どこかへ飛んでいってしまいました。

 その後、さすけはごんぞうおじさんの家をひきとって長者(ちょうじゃ)になり、お母さんと幸せに暮らしました。

 欲張りすぎると、ろくな事がありませんね。

おしまい


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