<一帯一路会議>「中国的平和」に警戒も
毎日新聞 5/14(日) 21:33配信
【北京・浦松丈二、ニューデリー金子淳】現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」について、中国の習近平国家主席は14日の国際首脳会議で、冷戦期の同盟ではない新たな国際関係への「平和の道」にしなければならないと訴えた。だが、「中国的平和」は、中国が巨大インフラ建設を通じて沿線国との関係強化を進める口実だとして、影響を受けるインドなど関係国からは懸念が示されている。
一帯一路は2013年秋に提唱。その後の成果について「道が通じれば、産業が興る。陸海空と情報ネットワークの複合的なインフラ・ネットワークが形成されつつある」と紹介。まず道を作ることが大切だと強調した。
構想が最も進んでいるのが中国パキスタン経済回廊だ。その目玉である水力発電所の建設現場で今月5日、導水トンネルの全線貫通式が開かれた。インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方を流れるニーラム川とジェラム川の合流地点。係争地付近に数十キロの地下トンネルを掘る難工事だった。
中国国営新華社通信によると、式典に出席したパキスタンのシャリフ首相は「劣悪な施工環境下で貫通させた。この工事には震撼(しんかん)させられた」とあいさつし、施工した中国企業を褒めたたえた。
習氏は13日、会議出席のため訪中したシャリフ氏と会談し、経済回廊の推進を約束。さらに「テロ対策、安全保障面での協力強化」を呼びかけた。発電所だけでなく道路や港湾建設などでも、治安確保が大きな課題になっているからだ。
一方、インドは今回の会議に首脳の派遣を見送った。インド外務省のバグレー報道官は13日、中パ経済回廊について「いかなる国も、自国の主権や領土への懸念を無視する計画を受け入れることはできない」と反対。中国に交渉を申し入れたことを明らかにした。海上のシルクロード構想も隣国スリランカやミャンマーの港を中国海軍が利用することを警戒し、賛否を留保している。
中国側は「経済回廊の建設はカシミール問題の立場に影響しない」(外務省報道官)と中立の立場に変化はないと強調する。しかし、中パの急接近に対抗して、インド軍首脳からは「イラン、イラク、アフガニスタンとの関係を強化すべきだ」との提言が出たと報じられるなど「一帯一路」が地域の緊張を高める事態も発生している。