毎日新聞 1/19(木) 7:45配信
政府は、自衛隊が使用した航空機など中古の防衛装備品を無償で他国に譲渡できるようにする財政法改正案を、20日開会の通常国会に提出する方針を固めた。安倍政権は2014年の「防衛装備移転三原則」で武器輸出を原則解禁したが、売却か貸与に限定され、無償提供できなかった。南シナ海問題を抱える東南アジアを念頭に、相手国の能力を強化しつつ日本の存在感も高め、中国をけん制する狙いがある。ただ、なし崩し的に外国への武器提供が拡大しかねない内容には批判も予想される。
財政法9条は国の財産について「適正な対価なく、譲渡、貸し付けしてはならない」としており、中古品でも無償譲渡できない。法律に基づく場合は例外で、国連平和維持活動(PKO)で使用した重機などを現地政府に譲渡した際は、特別措置法を制定した。
昨年、海上自衛隊で退役予定だった練習機TC90をフィリピンに引き渡した際は、財政法に基づき1機あたり年約70万円で貸し付けることで決着。自衛隊の航空機を渡す初のケースでフィリピン側は無償譲渡を求めていた。当時の中谷元(げん)防衛相は「中古装備品を無償・低価で譲渡する制度の検討が必要」と指摘していた。
検討中の改正案では、財政法に特則を加え、中古装備品の無償譲渡を可能にする。背景には、中国が南シナ海で軍事拠点化の動きを拡大する一方、周辺のフィリピンやベトナムなどの軍事力整備や海洋監視能力が不十分なままの現状がある。日本の防衛装備品への関心は高いが、新造品は高い価格が支障になる場合が多く、日本は中古品の無償譲渡を可能にすることで関係国との防衛協力を強化したい考えだ。「三原則」の運用指針で、提供可能な装備品は警戒監視や救難、輸送、掃海に関連するものに限定されている。
ただ、一定のハードルとなっていた「対価」も撤廃すれば、国会によるチェック機能が働きにくくなる恐れもある