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なにせ投げる時だけだもんねぇ、左は。箸を持つのもペンを持つのも荷物を持つのも右。 野球では打席に立つことがあれば基本的に右打席だし、ゴルフも打つなら右。 なんで投げる時だけは左なんだろうねぇ…
あ、誰かさんにツッコまれないように書いておこう。 思想的には絶対に左ではありません。難癖つける輩もいるでしょうけど、基本的には 中立からやや右に寄ってるかなというレベルです。間違っても「極」じゃないからね! 【極対談】羽川豊「クラブセットは店に1つ」、野村弘樹「後ろ姿でアイツは左と分かる」 レフティー“あるある”話
サンケイスポーツ 12/21(水) 5:00配信
第6回のテーマは「左利き」です。プロゴルファーの羽川豊(59)=フリー=はレフティーで、元プロ野球投手の野村弘樹氏(47)=サンケイスポーツ専属評論家=はサウスポー。10人に1人の割合ともいわれる左利きの特徴や、それぞれの競技での有利・不利、あるあるネタに至るまで語り合いました。
野村 「僕は、つくった左なんですよ。箸も書くのも右。子供の頃、星飛雄馬(※1)に憧れて、投げるのを左にかえたんです。父親が左利きで、『野球では投手、一塁手、外野手しかできないぞ』と言われました」
羽川 「星飛雄馬の影響とは、変わったサウスポーだね。ゴルフでいえばミケルソン(※2)に似ているね。彼は右打ちだった父親のスイングを鏡のように見ながら練習していて左打ちになった」
野村 「羽川さんは?」
羽川 「何でも左。ゴルフを始めるまでは野球をしていて、左投げ左打ちだった。プロ野球選手になりたくて、王貞治さん(ソフトバンク球団会長)や高橋一三さん(※3)に憧れた。左のグラブが少なくて、最初に買ってもらったファーストミットで全部こなしていた」
野村 「僕は三塁手もやりたかったんです。併殺とか格好いいじゃないですか。でも、消える魔球を投げたいという方が勝ってしまった。バカですよね」
羽川 「ゴルフは左利きでいいことがひとつもなかった。昔はクラブセットは店に1セットあるかどうかだし、手袋も練習場での打席もない。レッスン書も右と左を読みかえていた」
野村 「僕はブルペンで左投手を一切見ないで、右投手を参考にしていました。鏡の前でシャドーピッチングをすると右投げで映るのでイメージしやすかった」
羽川 「ハサミも左利き用がなかった。缶切りも右利きの人は手前に引くけど、左は押さないといけない。(電車などの)自動改札も、切符を入れたり、プリペイドカードをタッチしたりするところも右側。でも、その状況に慣れているから気にしないし、負担にもならない。それが左の感性なのかな」
野村 「捕手から『左投手は感性だ』とよく言われました。右投手はテークバックをこうして、ああしてと理詰めっぽい。左は感性、イメージですね。フォームもタイミングとかは考えますけど、腕や肩の位置なんかは気にしません」
羽川 「基本があるなかで、自分のものを大切に追求していくのが左利きかもしれないね。そういった意味では機転が利くのかもしれない。でも野球は左打者が絶対に有利でしょ。一塁に近いんだから。イチローがあれだけの数字を残せたのは左だからで、右だったら出せていない」
野村 「打ってから走る方向が逆ですからね。右打者とは教え方まで違ってきます」
羽川 「ゴルフコースは、右利き有利にできているといわれるけど、関係ない。止まっているボールをドローで打つかフェードで打つかだけだから。ただ、コースの設計者も右利きが多いから、右打ちのスライサーを意識してバンカーの位置などを考えてはいるだろうね」
野村 「実は、ゴルフを始めたときは左打ちだったんです。オフしかプレーしないから、ダフったときに左手首が痛くなるし、左肘に響くような感触もあった。けがをしたらやばいと思って右打ちにかえたんです」
羽川 「それは、かなりスイングが悪かったね(笑)。利き腕でゴルフすると、どこかを痛めるんですよ。右利きの人が右手で打ちすぎると、振り切りがすごく悪くなる。右利きは左手でクラブを振り抜くほうが絶対いい。体が開いて楽でしょ。そういうスイングの方がいいんですよ」
野村 「(何度も素振りをしながら)本当ですね!」
羽川 「ジャンボ(尾崎将司=右打ち)も右手じゃなく左手のリードが大切だと言って、左手を鍛えていた。右脳と左脳があるでしょ。利き腕じゃない方を鍛えることで、脳も活性化されるし、感性も磨かれる」
羽川 「左利きは結構、無謀なことをするよね。海外のギャラリーは逃げている(安全策をとる)選手には誰も拍手をしない。レフティーは珍しかったし、自分は刻むゴルフをしなかったから声援がすごかった。『レフティー! レフティー!』と呼んでくれた」
野村 「確かに『結果なんて知るか』って投げることも多かったです。思ったところにいくかは、投げてみないとわからないですから」
羽川 「左利きは、開き直る選手が多いかもしれないね。ミケルソンやバッバ・ワトソン(※4)も刻まない。野球でも、左利きの人はガンガンいくタイプだと思う。そういえば、(左利きは)歩くときに左肩が下がっているよね」
野村 「下がっています。僕もそうで、歩き方や後ろ姿を見ただけで『アイツは左だ』と分かります。食事の席も、僕は一番左に座らされます。『お前、左だよな』とか言われて。端に座らないと肘が当たったりするからですけど、面倒なときもあります」
羽川 「端に座ることは多いけど、気にしない。右利きの方が、左利きかを意識しているよ」
野村 「初めてゴルフを一緒にした人から、『野村さん、左だっけ』と嫌な顔をされたこともあります。『僕、右で打つんで』と答えたらホッとされました。左ってウザいんですかね」
羽川 「軽井沢で『レフティゴルフ協会』(※5)が世界大会を開催したとき、練習グリーンでは全員が左でパットをしていた。普段は右打ちしか見ていないから、『この光景は変だな』と、すごく違和感があった。自分たちは(右利きの人から)そう見られているのかもしれないね」
野村 「周囲の目は気にせずに、左利きにしかない感性を大事にしていきたいですね」
羽川 「左利きを誇りに思って頑張っていこうよ」
▼※1星飛雄馬 野球漫画『巨人の星』の主人公。左投げで、大リーグボールと呼ばれる架空の変化球が武器。消える魔球は2号。
▼※2フィル・ミケルソン 米国出身のゴルファー。46歳。左打ちで、米ツアー通算42勝は歴代9位。メジャーは「マスターズ」3勝(2004、06、10年)など5勝。1メートル90。
▼※3高橋一三 巨人9連覇を支えた左腕エース。沢村賞2度受賞。日本ハムにも7年在籍。通算595試合登板で167勝132敗12セーブ、防御率3・18。2015年死去(享年69)。
▼※4バッバ・ワトソン 米国出身のゴルファー。38歳。左打ちで独特なスイングが特徴の飛ばし屋。2012、14年「マスターズ」制覇。米ツアー通算9勝。「でかい奴」を意味するバッバはニックネームで本名はジェリー。1メートル91。
▼※5日本レフティゴルフ協会 左利きゴルファーの親善を目的として1994年に設立。初代会長は元巨人監督の川上哲治氏で、羽川は特別顧問。全日本大会が毎年開催されており、世界協会もある。
★指導法も左の感性
羽川はシニアツアーに出場しながら母校・専大のゴルフ部監督を、野村氏は桜美林大野球部のコーチを務めている。「いくつかヒントを与えて、打たせてみてどうか、という指導をしている。自分で嫌な感覚があったらやめた方がいいとも言っている」と羽川。11月の明治神宮大会準優勝に貢献した野村氏も、「何年も投げてきているので、フォームはいじらない。イメージを変えさせることはあります」と強調。ともに感性を重視した指導をしている。
■羽川 豊(はがわ・ゆたか)
1957(昭和32)年12月8日生まれ、59歳。栃木・足利市出身。高1でゴルフを始める。専大時代に「日本学生」4連覇。80年にプロ転向。81年「日本オープン」などレギュラーツアー通算5勝。82年「マスターズ」15位。2008年からシニアツアーに参戦して、11年「PGAフィランスロピーシニア」などシニアツアー通算3勝。4月から母校の専大ゴルフ部の監督に就任した。左打ち。1メートル80、78キロ。
■野村 弘樹(のむら・ひろき)
1969(昭和44)年6月30日生まれ、47歳。広島県出身。87年に大阪・PL学園高で春夏連覇を達成。88年ドラフト3位で大洋(のちの横浜、現DeNA)入団。93年には17勝を挙げ最多勝を獲得するなど、2桁勝利を通算6度マーク。2002年に現役引退。通算成績は301試合に登板し、101勝88敗、防御率4.01。引退後は横浜で投手コーチなどを務め、現在は野球評論家。左投げ左打ち。1メートル81。