むかしむかし、あるところに、とても仲の悪い和尚と医者がいました。
ある日の事、和尚が法事に出かけると、二人の百姓がけんかをしていました。
「これこれ、どうした? 何を争っておる」
和尚が訳を聞いてみると、二人は田んぼのさいか目の事で争っていたのでした。
「そうか。それならば、わしが何とかしてやろう」
和尚は二人の言い分を聞くと、二人が納得する分け方をして二人を仲直りさせたのでした。
するとちょうどそこへ医者が通りかかり、この話を聞くと大笑いしました。
「あはははは。和尚は『たわけ者』だからな。だから田を分けるのは、上手じゃろうて」
「何! わしがたわけ者だと!」
腹の立った和尚は、何とか医者に仕返しをしてやろうと考えて、小僧に言いつけました。
「急病だから、早く医者を呼んで来てくれ」
しばらくすると、小僧に話を聞いた医者が飛んで来ました。
「どうした!? 誰が悪いんじゃ!」
すると和尚は、すませた顔で言いました。
「おおっ、待っておったぞ。実はな、裏の竹藪が病気なんじゃ」
「竹藪? わしは人を治す医者じゃ! 竹藪の病気など治せんわ!」
医者が文句を言うと、和尚はこの時とばかりに言いました。
「人がお前さんの事を『藪医者』と言うとったから、きっと竹藪の病気も治せると思っとったわい。あはははは」
こうして和尚さんは、見事にさっきの仕返しをしたのです。
おしまい