こわいみやげ
むかしむかし、つる平(へい)さんという人が、お嫁さんの実家へ出かけました。
お嫁さんの実家の人は、みんな大喜びです。
「よく来てくれたのう」
「婿どのには、おいしい物をごちそうするからな」
お母さんは台所に行くと、何かを作り始めました。
すると台所へ、子どもたちが行きました。
お母さんは子どもたちを追い出そうと、子どもたちに言いました。
「これこれ、近寄るんじゃないよ。今作っているのは、恐ろしい物だからね」
「きゃーっ、恐ろしい物だって!」
「逃げろ! 逃げろ!」
子どもたちは、あわてて逃げて行きました。
さて、これを聞いていたつる平さんも、なんだか恐ろしくなりました。
(恐ろしい物とは、何だろう?)
しばらくして、お母さんは作った物をつる平さんの前に運んできました。
「さあ、おいしい物が出来ましたよ」
けれど、つる平さんは食べようとせず、真っ青な顔でブルブルと震えていました。
「どうしました? たんと作ったから、どんどん食べてくださいよ」
そう言われても、恐ろしくて手が出せません。
出された物をチラリと見ると、まっ黒な気味の悪い物がたくさん並んでいます。
「あの、その、・・・わしは、腹が、いっぱいで」
「ああ、そうね。そんならお重に詰めてあげるから、おみやげに持って行きなされ」
お母さんはそう言って、怖い物を詰めたふろしき包みをつる平さんの首にゆわえてくれました。
怖いふろしき包みを首にゆわえたつる平さんは、生きた心地がしません。
「もし、怖い物が食いついて来たら、どうしよう?
でも、せっかくのもらい物を、捨てるわけにもいかんし。
・・・あっ、良い物が落ちているぞ」
つる平さんは道に落ちていた長い木の棒を拾うと、ふろしき包みを棒の先の方にゆわえつけて、さわらない様にして歩いて行きました。
「よし、これなら大丈夫」
安心して歩いて行くと、石につまずいて転びそうになりました。
「あっ!」
そのひょうしに棒の先の包みが滑って、つる平さんの首にペタンとすいついてきました。
「ひゃあっ、助けてくれえー!」
つる平さんはふろしき包みを投げ出して、家にかけ出しました。
家に逃げ込んだつる平さんは、大急ぎでお嫁さんに怖いおみやげの話をしました。
それを聞いたお嫁さんは、つる平さんに言いました。
「まあまあ、それはきっと、おはぎですよ」
「おはぎ?」
「知りませんか? それなら一緒に拾いに行きましょう」
お嫁さんはそう言うと、つる平さんと一緒に、ふろしき包みを拾いに出かけました。
ふろしき包みは、すぐに見つかりました。
お嫁さんが包みを開くと、中からおはぎが出て来ました。
「ほら、やっぱりおはぎですよ」
お嫁さんに言われて、つる平さんがそれを見てみると、おはぎのあんこのところがくずれて、中の白いごはんが見えていました。
「あっ、やっぱり怖い物だ! 白い牙をむいてる!」
つる平さんはまっ青な顔をして、飛ぶ様に逃げてしまいました。
おしまい